熊本の山奥で過ごした少年期、夜は自然に暗闇だった。
星が近い夜はどこか安心感はあったが、小学校から遠足に来るくらいの山の上だった。
ある日、都会育ちの彼女に「見てみて、な〜んもない!」と言われ、暗闇に感動する人がいるんだと笑ってしまった。
春には通学路の山々が一斉に萌えはじめ、モコモコとした柔らかな緑に包まれた。
その景色がとても好きで、花壇や鉢の花には関心が無いそんな少年だった。
※ソーラーだらけで景色も変わった。
都会で暮らすようになってホームセンターに通うことも増えた。
ある日、「桔梗」と書かれた苗が並んでいるのを見かけた。
へ―――っ、名前は知っていたけれど・・・。眺めていると風船のような「つぼみ」に目が留まった。
淡くふくらんだその姿は、破裂しそうで恥じらいを耐えているようにも見えた。
始まる前の静けさ、はじける気配・・・それらを背負って頑張っている・・・惚れてしまった・・・。
それ以来、花の世界へ少しだけ踏み入ったが、未だ桔梗に勝るつぼみを知らない。
自然の桔梗は絶滅危惧種らしい。
※隣のおじさんが育てた桔梗・・・うっ美しすぎる。
投稿者:A.T